「君を愛することはない」ってラブラブハッピーエンドへの常套句じゃなかったんですか!?
 不器用だからと避けていた刺繍もやってみよう。

「もう受け取ってはくれないかもだけど……」

 それでも、今までの私から変わりたい。

“コルンが私を好きだったなら、こんな書類を用意しているはずはない。それに私の言葉にだってもっと他の言葉をくれたはずだわ”

 愛することはない、なんてセリフにあっさりと納得して受諾してしまったのだ。
 きっとそういうことなのだろう。

「だからせめて、好かれる努力をしたいわ」

 自分磨きならコルンへ迷惑はかけないし、騎士として努力している彼に釣り合うようになりたい。
 そうして少しでも成長したら、もう一度だけ彼に告白しよう。

“振られてしまったらちゃんと諦めてこの書類も提出するわ”

 だからもう少しだけ、彼の婚約者でいさせてください。
 自分勝手だとはわかっているけれど、私はそっと婚約破棄合意書を仕舞ったのだった。


 
 それからの私は頑張った。
 なんだかんだで面倒見のいいエリーに勉強を見て貰い、先生へも積極的に質問をしに行った。
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