「君を愛することはない」ってラブラブハッピーエンドへの常套句じゃなかったんですか!?
「いいじゃない、エリー。本ならどこででも読めるんだから」
「わざわざ演習場で読むものではないってことが言いたいのよ」

 はしゃぐ私の後ろではぁ、と大きなため息を吐くのはエウジェニア・フィオリ伯爵令嬢。
 塩対応がデフォの私の友人だ。

「婚約までかなり大変だったのよ? やっと婚約者の地位を手に入れたんだから堪能しなきゃ損でしょ!」
「かなり大変って……、第一騎士団団長の娘であるアンタの家にコルン卿もよく来てたんじゃないの?」

“それはそうだけど”

 この国には第一から第六まで騎士団があり、その数字が小さくなれば小さくなるほど地位が高い。
 そして最もエリートである第一騎士団の団長こそがラヴェニーニ侯爵、つまりは父だった。

 面倒見のいい父は私が幼い時からやる気のある騎士たちを集めラヴェニーニ侯爵家で個人的に訓練をつけており、そして今から六年前……私が十二歳、コルンが十五歳の時に私たちは初めて出会った。
 騎士見習いになったばかりの真面目なコルンは誰よりも熱心に通っており、どんな訓練にも真っすぐ取り組む姿に私が恋に落ちるのはある意味当然の流れだったのである。
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