「君を愛することはない」ってラブラブハッピーエンドへの常套句じゃなかったんですか!?
 エリーの指摘通りで、ダンスを踊った令息たちは私がコルンの話しかしないことで婚約破棄の噂はただの噂だと思ってくれたのか、単純にコルンの話しかしない私を面倒な奴だと切り捨てたかで婚約の申込どころか二度目のダンスの誘いすらない。

 だが、外から色んな令息と踊りまくる私を見た他の貴族たちはそうは思ってくれなかったようで、現状のモテモテ状態になってしまったという訳だ。
 
「侯爵家ってやっぱり魅力的なのよねぇ」
「あー、まぁそれでなくてもアリーチェは最近頑張ってるし……」
「え?」
「いいえ、気付いてないなら別に気付かなくてもいいの」

 フンッと顔を背けたエリーがすぐに手元の本へと目を落とす。
 私からのお礼という賄賂なのだが、気に入ってくれたようで満足だ。

「でも、このままじゃまずいわ」

 男漁りをしているなんて噂がコルンにも届いてしまったら、再び告白どころか会ってすら貰えないかもしれない。

“もう時間がない……”

 本当なら完璧に出来た刺繍入りハンカチと共に、夜景の綺麗な場所で夕陽が沈むのを眺めながらロマンチックにプロポーズしたかったのだが、こうなってしまっては仕方がないだろう。
< 22 / 59 >

この作品をシェア

pagetop