「君を愛することはない」ってラブラブハッピーエンドへの常套句じゃなかったんですか!?
 そう願いながら彼からの反応を待っていると、少し戸惑ったように、だが差し出した花を受け取ってくれた。

「愛するつもりはない、のでは?」
「ッ、それは、その」

 一瞬口ごもる。だがこのまま誤解されているより、私がいかに愚かで浅はかだったかを知られる方がマシだと思った私はすぐに口を開いた。

「――本で、読んだの。流行っていたんだけど、知らないかしら? 『君を愛するつもりはない』というセリフから始まる溺愛ストーリーなんだけど」
「そんな辛辣なことを言ってからの逆転劇があり得るんですか?」
「うぐっ」

 もっともな指摘をされてダメージを食らうが問題ない。この程度想定済みだ。

「要はギャップ的なやつじゃないかなって思うの、印象最悪からのスタートだったら、あとは上がるだけじゃない? それに上がり幅もより大きくなるから溺愛感が増すって言うか」
「全然理解できませんが……とりあえずそういう物語が流行っているのだということは理解しました」

 けど、それを何故俺に? なんて真顔で聞かれ、私は一瞬眩暈がする。

「そんなの、私がコルンを好きだからよ」
「はぁ……」
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