「君を愛することはない」ってラブラブハッピーエンドへの常套句じゃなかったんですか!?
“そ、その話は無くなったんじゃ”
 
 なんて震えながら、私も口を開いた。

「ご、ごめんなさい、実はまだあれ出してなくて……」
「そうなのですか?」
「コルンと婚約破棄するのが嫌で、私の部屋の引き出しに仕舞ってあるの」

 少々、いや、かなりビビりながらその事実を告げる。
 一応今の私たちは誤解も解けて両想いというやつだが、恋人と婚約者の差は大きい。

 当然私は彼との結婚以外は考えられないが、もしコルンが婚約破棄が成立済みだと思っていたとしたら、私とはとりあえず恋人になっただけと思っている可能性もあるだろう。
 
 私は今どれくらいいい女になれたのだろう?
 結婚はしたくないが、恋人くらいにならしてやってもいい、というレベルにしかまだなれていないかもしれないと青ざめる。

“どうしよう、恋人までならいいけど婚約破棄はそのまましたい、なんて言われたら!”

 そんな不安が過り、さっきとは正反対の理由で心臓が潰れそうになりながら彼の言葉の続きを待つ。
 エリーの言葉を借りれば最終勧告待ちというやつだ。

 バクバクと激しく音を鳴らす心臓を服の上からぎゅっと抑えた、その時だった。

 
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