「君を愛することはない」ってラブラブハッピーエンドへの常套句じゃなかったんですか!?
 人柄も知っていて、かつこの縁談を整えた人こそ父である侯爵ともなればこの身分差なんてないも同然。
 彼は三男なので、婿入りしてくれれば父も私もウルトラハッピーの大団円である。

「あまり参考にならなさそうね。それで最後の一冊は……」

 小説としては面白かったが、参考文献としてはあまり参考にならなそうな内容にガッカリしつつ手に取った三冊目。
 その三冊目も最近ではもう定番すぎる設定のもので、政略結婚で出会った初対面の夫に「君を愛するつもりはない」と宣言されるところから始まる溺愛ものだった。

“流行っていたのは知ってるけど”

 実際手に取ったのは初めてで、パラリとページを捲ってみる。
 
 仕方なく結婚したふたり。
 そして初対面で告げられるその言葉に嫌な気持ちになったものの、そこから始まる溺愛の日々。
 大事にされることへ戸惑いながらも少しずつ距離を縮めた二人が結ばれるところでは思わずうるっとしてしまった。

「最初はあんなこと言ってたくせにって思ったけど……」

 つまりこれは振り幅の問題なのだろう。
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