「君を愛することはない」ってラブラブハッピーエンドへの常套句じゃなかったんですか!?
 恥ずかしいからと食べさせあいっこはまだしてくれないが、きっと結婚した今、ふたりきりの時ならば応じてくれるかもしれない。

「アリーチェ様は疲れておりませんか?」

 結婚披露パーティーを終えてぐったりとベッドに寝転がっていた私を気遣うように見つめるコルンに思わず口をムスッと突き出す。

「……アリーチェ、様?」
「え」
「そろそろ敬語もやめて欲しいし呼び捨てで呼んで欲しいわ」

“だってやっと結婚出来たんだもの!”

 そろそろ名前くらい呼び捨てられたい。そんな私の希望を聞いたコルンは、一瞬恥ずかしそうに目を左右に彷徨わせたものの、ゴホンと咳払いをして再び私へと視線を合わせた。

「アリーチェ」
「嬉しいわコルン! あと、私はとっても元気よ!」

 ベッドから飛び起きて彼へと抱き着くと、しっかり抱きとめてくれる。
 ぴったりと引っ付いたことで私の心臓だけでなく彼の心臓も激しく鳴っていることに気付き私は幸せを感じた。

 ――だって、今日は私たちの結婚式。そして、待ちに待った初夜なのだ。

“コルンも緊張しているのかしら”

 同じなら、嬉しい。
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