「君を愛することはない」ってラブラブハッピーエンドへの常套句じゃなかったんですか!?
「だっ、だからその、実はコルンのことをそのっ、愛してなかったというか、これからも愛するつもりはないのよ!」

“言ったわ!!”

 これで第一関門はクリアだ。
 後は呆然としているだろうコルンに全力で好き好きアピールをかまし溺愛するだけ――……!

「あぁ、どうりで話しにくそうだと思いました」

 私の計画では呆然と固まっているはずのコルンが、ふっと息を吐きながらそう口にする。

「この婚約は仕方なかったということですか?」
“いえ、私の熱望です”
「他に愛される方がいらっしゃるのですか?」
“貴方以外カボチャに見えます”

 心の中で全力でそう答えながら、だが実際に口にするのはまだ早いと必死に口をつぐむ。
 何故ならこれは落として上げるという恋愛テクニックなのだ。

 冷静に見えるよう目の前のカップを手に取りゆっくりと口をつける。
 余りにも彼に愛を叫ぶことに慣れすぎて、そうやって物理的に口を塞がなければ彼への愛が溢れそうだったからである。
 
「そうですか、わかりました。いつも心にもない言葉を言わせてしまい申し訳ありません」
「へ?」
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