「君を愛することはない」ってラブラブハッピーエンドへの常套句じゃなかったんですか!?
 そうやって黙っていた私に何か思うところがあったのか、コルンから謝罪の言葉を言われ私はぽかんとした。

「ご安心ください。いつでも対応出来るようちゃんと準備はしておりましたので」
「え、……え?」

 呆然とさせるはずが私の方が呆然としてしまう。
 そんな私の前に差し出された一枚の書類。

 その書類の一番上には大きく『婚約破棄合意書』と表記されていた。

「こ、婚約破棄……っ!?」

 後頭部を鈍器で殴られたような衝撃に目を白黒させながらそう叫ぶと、コルンがゆっくりと頷く。

「いつかこうなると思っていました。俺の方はもうサインが済んでおりますので、あとはアリーチェ様のサインをいただければ婚約破棄出来ますよ」
「あ、えっ、えっ、お、お父様のサインまであるのだけれど……」
「はい。事前に頂いておいて良かったです」

“どういうことなの……!?”

 理解が出来ない。
 婚約破棄?
 私が? コルンと?

「そ、そんなっ」
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