君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
四月、私は学校で家の鍵を落としてしまった。必死に探していると夏樹くんが「僕も探すよ」と言ってくれて、暗くなるまでずっと探してくれた。やっと鍵を見つけた時、夏樹くんは「よかった!」って自分のことみたいに喜んでくれて、私は一瞬で恋に落ちた。

でも、人気者の夏樹くんのことが好きだなんて誰にも言えない。だって釣り合わなさすぎる。勉強も運動も普通。容姿も普通。何もかもが普通の私が夏樹くんに近付くだけで罪だ。だからこうしてこっそり見ることしかできない。

「かっこいいな」

汗を拭う夏樹くんを見ていると、「おい、ボーッとしてんなよ!」という言葉と共に頭にチョップが当たる。顔を上げれば幼なじみの光(ひかる)が呆れたように私を見ている。

「痛ッ!何すんのよ!」

「お前がボーッとしてたから」

「意味わかんない」

光は保育園の頃から一緒の幼なじみだ。でも仲は良くない。光は乱暴で口も悪い。夏樹くんとは真反対の人間だから私から話しかけることはほとんどない。だから、こいつと私が幼なじみなことを知っている人はいない。
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