君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
つい早口で捲し立てるように話してしまう。男の人は「ちょい落ち着きぃや」と笑った。そして私に近付く。私が下がると男の人はますます距離を詰めてくる。あっという間に私は壁際に追い詰められ、逃げられなくなった。

「自分、可哀想やなぁ。お父さんとお母さんに売られてしもたんやで」

「えっ……」

売られた?お父さんたちに?意味がわからない。今朝、学校に行く時二人はいつものように笑って見送ってくれた。どうして?どういうこと?

「俺な、こう見えてヤクザの組長なんや。そんでお前のお父さんが俺から金を借りたんやけど返済できんくなって、この家とお前を売るってことで話がついたんよ。わかった?桃華(ももか)ちゃん」

私の名前まで知っている。そのことに私はこの男の人の言葉が嘘ではないのだと悟った。お父さん、ヤクザから借金なんて……。ごく普通のサラリーマンだと思ってたのに。いや、それより私はこれからどうなるの?売るってどこへ?

「わ、私、売られるってどういう……」

「そんなん自分が想像しとる通りやよ。ちょっといかがわしいお店で働くか、金持ちのおっさんの愛人か嫁になったらええんやで。桃華ちゃんは若くて別嬪さんやからな。買いたいって人はようけ見つかるわ」
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