君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
コツ、コツ、コツ。

住宅街に私の足音が響く。鼻歌を歌いながら私は歩いていた。この県に来てからあのギラギラした視線を感じていない。これがどんなに幸せか。

コツ、コツ、コツ。

酔って少しぼんやりとした頭だったけど、あることに気付いた。靴音が二重に聞こえてくる。私以外に誰かが歩いている？

私は立ち止まる。すると足音がピタリと止まった。嫌な予感がする。酔いがスッと冷めていく感覚を覚えた。この感覚を私は知っている。指先が震え始めた。

少し早めに歩いてみる。すると靴音がまた二重に夜道に響いた。間違いない。誰かが私をつけている！怖くて泣きそうになった。

「何で、あの男からは逃げたのに！」

このまま帰ったら、家の場所を教えてしまうことになるかもしれない。どこか人の多いところへ行こう。そう思いながら足を動かす。その時だった。

腕を掴まれた。悲鳴を上がる前に裏路地に引き摺り込まれた。裏路地の壁に体を押し付けられ、口を手で塞がれる。
< 114 / 177 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop