君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
「はい、手を出して」

紫音さんは私をソファに座らせた後、救急箱を取り出して言った。私が手を差し出すと、慣れた手つきで手当てをしていく。私はそれを見ながら疑問に思っていることを恐る恐る訊ねた。

「あ、あの、彼氏ってどういうことですか?ここ、どこですか?」

「彼氏は彼氏だよ?付き合ってもう三年になるのも忘れちゃったの?同棲しよって言ってるのに美帆(みほ)がなかなか「いいよ」って行ってくれないから、美帆が寝てる間に連れて来ちゃった」

笑顔で紫音さんが言った言葉に、思わず手を引っ込めてしまう。どうしてこの人は私の名前を知っているの?私はこの人を知らない。同棲しようなんて話も知らないのに、一体どうして!?

「こ〜ら。まだ手当て終わってないよ」

紫音さんに再び手を掴まれて手当ての続きをされてしまう。手の痛みはとっくに消えていた。それだけ恐怖が勝っていた。怖い。ここから逃げたい。でもドアからも窓からも逃げることができない。
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