君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
メランコリー・デート
私は今日、一年付き合った彼氏の智樹(ともき)と別れる。今日は最後のデートだ。特に緊張することなく、メイクも服装も特に気合いを入れることなく、待ち合わせ場所へ向かう。

「紬(つむぎ)!おはよう!」

待ち合わせ場所に行くとすでに智樹は待っていた。おしゃれが苦手なくせに、デートの時は張り切った服を着る。今日最後のデートだと智樹もわかっているくせに……。

「今日のロゴTシャツ可愛いね。どこで買ったの?」

まるで付き合いたてのカップルみたいに頰を赤くして、私の服装を褒める智樹を見ているとため息を吐きたくなる。こんな言葉一つで私は惑わされる女じゃない。

「このロゴTシャツ、中学の時に買った安物。いちいち褒めなくていいから!」

そう吐き捨てて歩き出そうとすると、手を優しく掴まれる。驚いて顔を上げると指を絡められた。

「……今日のデートが終わるまではこうさせて」

「わかった」

手を繋ぐくらいは許してもいいかもしれない。私は承諾し、智樹との最後のデートが始まった。
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