君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜

優しい人

ピピピ……ピピピ……。

目覚まし時計の音が耳に響く。布団の中で微睡みながら、今日は何曜日だっけと考える。今日は月曜日だ。ゴミ出しして、あと仕事も行かなきゃ……。

布団から起き上がり、少しふらつきながらキッチンへ向かう。ご飯の支度をしなくちゃ。ご飯を食べて、身支度を整えて、会社にーーー。

「環奈（かんな）、何してるの？」

キッチンへ重い足を動かして向かっていたら、背後から抱き締められて耳元で囁かれる。びくりと肩が大きく震えた。

「あ、飛鳥（あすか）くん……。今から朝ご飯作るね。ご飯食べて仕事行かなきゃ……」

飛鳥くんは私と同棲している彼氏だ。ただの会社員と私と違って飛鳥くんは小説家をしている。若者を中心に人気を集めていて、ドラマ化の話もあるらしい。とにかく私にはもったいないすごい人だ。

「環奈」

飛鳥くんは私を離した後、自分の方を向かせる。昨日も遅くまで執筆していたのか、その目の下には隈ができていた。