君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
「ねぇ、髪のアレンジしてもいいかな?動画で見て紗夜に似合うと思ったんだよね〜」

「……好きにしてください」

どこかぶっきらぼうに返す。ここに無理やり連れて来られてから、口数は当然減ったし、表情だってほとんど今は無表情が多い。でも風雅はいつも都合よく解釈する。

「紗夜はいつもツンデレだね〜。ここには僕しかいないんだから、もっと素直に甘えてくれていいんだよ?」

幸せそうに笑いながら風雅は私の髪を手に取り、アレンジを始めていく。本当のツンデレと嫌っている違いもこの人にはわからないのか。まあ、まともな心を持っている人間が誘拐や監禁をすることはないだろうけど。

風雅に髪を好きにされながら、私はここに来てどれくらいになるかと考える。少なくとも半年はここにいる。半年前まで私は就活に追われる大学生だった。

黒い就活用スーツに身を包み、一日に何社も面接に行く。不採用通知が届くたびに泣いて、失望して、死にたいと呟いた。でも今は、あの頃に戻りたいと思ってしまう。
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