君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
龍羽さんはそう言った後、部屋を出て行った。ピタリと閉じられたドアを見て私はぼんやりと考える。龍羽さんが言ったパティスリーは行列ができるほどの人気のお店だ。一度食べてみたいとSNSで呟いた記憶がある。だけどーーー。

(ケーキも何もいらないんだけどな……)

だけど龍羽さんは紅茶の入ったティーポットとケーキを持ってきた。仕方なく私は猫足のテーブルまで向かい、椅子に座る。

「ここのケーキはおいしいとSNSで評判らしいな」

「はい」

ケーキは二つ。一つは私ので、もう一つは龍羽さんのだ。艶々とした苺が乗ったショートケーキだ。私の一番好きなケーキ。

龍羽さんが淹れてくれた紅茶を飲む。ほろ苦い紅茶だ。おいしいはずなのに、心は何も動かない。

「おいしいな、このケーキ!」

ケーキを一口食べた龍羽さんが瞳を輝かせ、笑顔で言う。甘いものを食べた人はこんな風に幸せそうな顔をする。私もケーキを口に運んだ。

「どうだ?」
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