君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
ベッドから降りて鉄格子に近付きながら私は叫ぶ。私の声が大きく反響した。つまりこの牢獄は地下に存在しているということだ。私の声と足枷の鎖がジャラジャラという音が響く。

「誰か!!」

その時だった。ドアが軋むような音が遠くから聞こえた。続いてコツコツという足音。誰か来る!私は身構えて後ずさった。

「目が覚めましたか。気分はどうですか?」

私の目の前に立ったのは、明るめのブラウンの髪をして高そうなスーツを着た男性だった。会ったことのない人だ。猫カフェのお客さんでも見たことがない。

「あ、あなたは……?」

「私は律(りつ)。手荒な真似をして申し訳ありませんでした。診察させてください」

診察という言葉に、目の前の律さんという男性の職業は医者なのかと考えてしまう。律さんはポケットから鍵を取り出すと、鉄格子の扉を開けて中に入って来た。そのまま近付いてきたため、後ずさる。

「逃げないでください。大丈夫。何も怖いことはしませんよ」
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