君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
返事をするとドアがゆっくりと開く。そこにいたのは揚羽でも家族でもなかった。

「結婚おめでとう」

「胡桃(くるみ)さん!?どうしてここに!?」

目の前に立っていたのは、私が働く花屋の常連さんだった。手には真っ白な薔薇の花束を持っている。

「今日結婚式だって聞いてね。来たんだ」

「そ、そうなんですか?」

私は胡桃さんに確かに結婚することは話していた。でも日付やどこの式場でするのかは教えていない。誰が教えたんだろう。プランナーさんや職場の人が教えるとは限らない。

でも、お祝いをしてもらえるのは嬉しいという気持ちも少なからずあった。私は「ありがとうございます」と言って花束を受け取る。花束はまるで花嫁が持つブーケみたいだ。

「ところで一花さん。ドレス、随分と似合っていませんね。ブーケもあまり似合っていないような……。あなたにはもっとシンプルなものの方が良さそうですが」

胡桃さんに指摘され、私は「夫が選んでくれたので」と返す。可愛いプリンセスラインのドレスも色とりどりのブーケも趣味ではない。でも揚羽が一生懸命選んでくれたから……。
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