君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
「そもそも会いたくないの!」

写真を一目見て気に入るって何?それは社長の息子って私より六歳も歳上だし。必死になってあるお父さんが嫌で、最近は顔を合わせないようにしていた。そんなある日。

「蘭、しつこくして悪かった。ちょっといいところでご飯でも食べよう」

そうお父さんに謝られて、振袖を着せられた。この時点で察することができたらよかったけど、外食に浮かれていた私はドレスコードが必要なお店なんだと信じて疑わなかった。

そして車で揺られて到着したのは豪華な料亭だった。そのお店の前では知らない男性が立っていて、「初めまして」とニコニコ笑っている。その時初めて私はお父さんに騙されていたのだと知った。

「おいしい料理を食べてお話しするだけでいいから。な?」

無言でその場に立ち尽くす私に、お父さんは機嫌を取るような猫撫で声で言う。私は二人に背を向けて振袖を着ているというのに走り出した。そして今に至る。

「ハァ……ハァ……」
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