君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
鳩尾の辺りが痛い。息が切れていく。どこへ行こう。とりあえず彼氏に事情を話して匿ってもらおうか。そう思ってバッグの中からスマホを取り出した。その時。

目の前に高級車が止まる。その運転席から出てきたのは、あの料亭の前にいた会社社長の息子だ。思わず身構えてしまう。

「騙すような形を取ってしまってすみません。でも一度あなたと話してみたかったんです」

会社社長の息子が近付いてくる。私は慌てて距離を取った。ドクドクと緊張が生まれていく。

「何で私なんですか?社長の息子ならお金持ちのお嬢様とのお見合いできますよね?私の家ははっきり言って裕福じゃないし、そもそも私には彼氏がいるんです!」

私がそう言うと、会社社長の息子の雰囲気がガラリと変わった。それまでは幼い子どもを困りながらも一生懸命宥めるような優しい雰囲気だったのに、スッと音を立てて空気が冷たくなっていく。気が付いたら、私は会社社長の息子に抱き締められていた。

「や、やめて!離してください!」

「離さないよ」
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