君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
「裕樹!おはよう!」

待ち合わせ場所ですでにスマホを見ながら待っていた裕樹に声をかける。顔を上げた裕樹は、「おはよう」と言いかけて顔を顰めた。ああ、これは文句を言われるやつか。

「何その格好。ワンピース何で着てるの?あと、メイクもしてるよね?」

「このワンピース、膝丈じゃなくてロングだよ。あとメイクもナチュラルだし」

「ダメダメ。一旦家に戻ろう。着替え直してメイク落として」

裕樹はそう言い、私の手を掴んで歩き出す。私は心の中で大きくため息を吐いた。やっぱりこうなったか。

付き合い始めてから、裕樹は私がおしゃれをしたりメイクをするのを嫌がるようになった。理由は「おしゃれをして可愛くなった渚を見ていいのは僕だけだから」だそう。実際、お家デートの時はスカートやワンピースを着ても何も言われないし、メイクだって「可愛い」って言ってくれる。でも外でデートをする時は許されない。

私の家に着くと、裕樹は「お邪魔します」の一言も言わずに勝手に家の中に入り、クローゼットを漁る。そして「これに着替えて」と私に服を見せた。無地の白Tシャツとデニムパンツ。デート服にしてはあまりにも地味すぎる。……もう限界だ。
< 22 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop