君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
その要求に少し戸惑ったものの、私は「わかった」と言い目を閉じる。これで終わりになるのならキスなんて安いものだ。

「ありがとう!」

裕樹はそう言った後、唇を重ねてくる。何度も何度も唇が重なって、少し苦しい。その時だった。

「んんッ!」

口がこじ開けられた。裕樹の舌が入り込んでくる。ーーーいや、舌だけじゃない。何か錠剤を砕いたようなものが入ってきている。

それを認識した瞬間だった。手足が痺れる感覚を覚えた。息が苦しい。慌てて裕樹から離れるものの、苦しさはどんどん増していく。何が起きた?私の体は何が起きているの?

混乱する私に裕樹は微笑む。そして私の頰を撫でた。その顔は今まで見た裕樹の中で一番幸せそうで……。

「渚と別れるなんて嫌だ。でも生きている限り、渚と僕は結ばれない運命なんだね。だから一緒に死のう。大丈夫。僕もすぐにそっちに行くから」

「……い、や……。たすけ……!」

さっき飲まされたのは毒だったんだ。慌てて助けを求めるためにバッグの中からスマホを取り出す。しかし、痺れた手からスマホは滑り落ちて、私は床に倒れた。

「おやすみ、あの世で結婚しよう」

裕樹のその言葉を最後に、私の目の前は真っ暗になった。
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