君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
男の人は微笑みながら近付いてくる。私は「嫌。来ないで」と呟くように言って首を横に振る。駆け出したいけどそれを手足の鎖が許さない。

「そんなに拒否されると悲しいなぁ。僕の名前も未だに呼んでくれないし。ほら、呼んでみてよ。名前忘れちゃった?」

私は男の人の言葉に何も返さない。この人の名前なんて覚えたくもない。だから覚えない。

「忘れんぼの華に教えてあげる。僕の名前は計(けい)だよ」

そう言った後、男の人は私を抱き締めてきた。途端に恐怖がブワリと更に強くなっていく。涙がまた溢れ出した。

「嫌!!離して!!家に帰して!!もう嫌だ!!」

男の人の腕の中で暴れようとするけど、重い鎖のせいで叶わない。子どもが駄々をこねているだけに思えてくる。そんな私の頭を男の人は撫でた。その目はとても幸せそうで、だからこそ怖い。

「華、家には帰れないよ。華はここにずっといなくちゃいけないんだ」

「そんなの知らない!!離して!!」
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