君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
私は男の人の胸板を押す。どんなに押しても当然ながらびくともしない。監禁生活はまだ始まってそんなに日にちは経っていないはずなのに、体力が落ちた気がする。息が上がって苦しくなる。

「うっ……うあぁぁぁぁ……」

大きな声を上げて泣いてしまう。この声に誰かが気付いてくれないかと淡い期待を抱いたものの、この部屋は家の地下にあって、私の声なんてこの世界の誰にも届かないんだということを思い出してしまう。その絶望を思い出してしまうと、また涙が止まらない。

「よしよし、大丈夫だよ。僕がそばにいるからね。今日の夕食は華の好きなグラタンにしようか。おいしいのを作るからね」

そう言って男の人は私を抱き上げた。ふわりと足が宙に浮いて驚きで涙が止まる。男の人は楽しそうに私を抱き上げたままくるりと回った。

「ひっ、やっ……!」

ジャラジャラと鎖が音を立てる。涙が止まったものの、恐怖がなくなったわけじゃない。

「降ろして!」

私がそう言うと男の人は私を地面に降ろしてくれた。でも私のことをまだ抱き締めている。
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