君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
婚姻前夜
時計の針はもうすぐ午前零時を指そうとしている。私は広いリビングのソファに座り、ただぼんやりとしていた。幸せなはずなのに、何かが違うような気がする。

「麗奈(れいな)」

ソファに座っている私の隣に婚約者である高嶺(たかね)さんが座る。高嶺さんは私の手に優しく触れた。そして困ったように笑う。

「明日は本番当日だよ。そろそろ寝ないと大変だ。ベッドに行こう」

「はい……」

私は頷き、高嶺さんと二人で寝室へと向かう。寝室を開けてすぐに目に入るのは、大きなキングサイズのベッドじゃなくて真っ白なウェディングドレスだ。明日、私はこれを着て高嶺さんのお嫁さんになる。

「嬉しいな。麗奈がお嫁さんに来てくれるなんて……」

ベッドに横になると、私の頰を高嶺さんは優しく撫でる。好きな人に触れられたら、きっと胸が高鳴って苦しいものなんだろう。でも私は何も感じない。夢の中の出来事みたいにぼんやりとした感覚だ。

結婚する前日ってこんなにも何も感じないものなのか。高嶺さんは私の人生を救ってくれた人なのに……。
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