君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
それからは、気付いたら会社を辞めさせられて、高嶺さんの家で暮らすようになった。そして付き合ってもいないのにプロポーズされて、でも私は高嶺さんに捨てられたら生きていけないから頷くしかなくて……。流されるように今日を生きている。

(でも、何か変。ずっと違和感を覚えてる)

私の隣では、高嶺さんが相変わらず髪や手に触れてくる。その時に彼がボソッと言った。

「うまくいってよかった」

その言葉に私は飛び起き、高嶺さんから距離を取る。高嶺さんは驚くこともなく穏やかな笑みを浮かべていた。体が震える。嫌だ。嫌だ。こんなの嫌だ。

「データが消えたあの騒動は高嶺さんが仕組んだことなんですか?」

「そうだよ」

その一言に指先までがスッと冷たくなる。寝室から出ようとドアまで走った。でも高嶺さんに素早く腕を掴まれる。

「こんな時間にどこに行くつもり?」

高嶺さんの声のトーンは、出て行こうとする恋人を心配するものだった。私はその腕を振り解き、彼を睨み付ける。
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