君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
もうあんなところには帰らない。そのためにはしっかり学んで、いいところに就職しないと。そのためにバイトだって頑張っている。

大学を出ると、やけに騒がしかった。主に女の子が何か騒いでいる。よく見ると大学の正門前に一人の男の人が立っていた。長く艶々な黒髪の綺麗な男の人だ。歳は二十代後半くらいかな。この大学の卒業生なんだろうか。

女の子たちはアイドルを見かけたみたいにはしゃいでいるけど、私はバイトの時間があるためのんびりしていられない。男性の横を通り過ぎる予定だった。でも、素早く腕を掴まれてそれは叶わなくなる。

「待って」

「えっ……な、何ですか?」

こんな男の人、私は知らない。男の人はニコニコと笑っていた。

「迎えに来たよ。さあ、一緒に帰ろうか」

「いや、私バイトが……」

「バイトは辞めるって言っておいたから」

「はぁ!?」

何を言っているんだ、この男は。驚き過ぎて言葉が出てこなくなる。男の人の長い腕が腰に巻き付いて、無理やり歩かされる。

「や、やめてください!」

「君、お父さんに売られたんだよ」
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