君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
その一言で私の抵抗がピタリと止まる。売られた?一体どういうこと?目で男の人に問いかけると、彼はニコリと笑って「あの中で話そうか」とコインパーキングを指差す。そこには一台の車が止められていた。ドラマに出てきそうな黒塗りの高級外車だ。

車の助手席に乗せられ、車はゆっくりと都内を走り出す。しばらくの沈黙の後、「さっきの話、どういうことですか?」と私は震える声で訊ねた。前を見ながら男の人は淡々と言う。

「そのままの意味だよ。君のお父さんは君を売った。そして僕が君を買った。それだけ」

私の父さんは、あの田舎で小さいながらも会社を経営していた。その会社が倒産の危機に遭い、困り果てた父さんは取引先の一つであった男の人に私を売ったのだという。あり得ない。こんなの人身売買だ。

「君のお父さん、人としてアレだね。君を何の躊躇いもなく「売る」って言ったよ。その対価として俺が小切手に「好きな額を書いていい」って言ったらスラスラ馬鹿高い金額書いちゃうし」
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