君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
私の言葉に葉山さんはすぐに「嫌です」と即答する。そして熱の籠った目で私を見つめた。思わず目を逸らしてしまうと、顎を掴まれて強制的に目を合わさせる。

「可愛い。よく似合ってます」

「や、やめてください……。家に帰して……」

ギシギシと縄が音を立てた。これからどうなるのか怖い。葉山さんは震える私に気付いたのか、「安心してください」と微笑む。

「咲良(さくら)さんを傷付けるつもりはありません。ただ私を好きになってほしいんです」

「……こんなことをしている人を好きになんてなれません」

思ったことを口にすると、葉山さんは「必ずあなたは私を好きになりますよ」と言い、鏡を横にずらして私の前に椅子を持ってくる。その椅子に座った葉山さんは「ストックホルム症候群って知ってますか?」と訊ねた。知らないので首を横に振る。

「昔、スウェーデンの首都・ストックホルムで銀行強盗が発生しました。犯人は人質と共に銀行に立てこもったんです。その事件が解決した後、人質と犯人は結婚してしまったんですよ。監禁されている時間が長ければ長いほど、犯人に同情や愛情を抱きやすくなる。これがストックホルム症候群です」
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