君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
宝物
「ねぇ、今日勝手に一人で外に出たよね?どうして?」

午後六時。仕事から帰って来た私の旦那さんである渉(わたる)が「ただいま」も言わずに詰め寄ってくる。思わず後ずさると腰に手を回され、片手を掴まれて逃げられなくなった。

「今日、スーパーで卵の特売日だったの。だから……」

「だから買いに行ったの?そんな可愛い服で?」

ジッと見下ろされると何も言えない。可愛い服って渉は言うけど、今日着ているブラウスは高校生の頃に買ったセール品だ。

「スーパーの買い物は週末にまとめてしてるじゃん。どうして外に行く必要があるの?」

「そ、それでも急に必要になるものだってあるじゃん!ティッシュとか歯磨き粉とか……」

必死に話す私を冷たい目で渉は見つめる。そしてため息を吐いた後、鞄を廊下に投げ捨てて私を抱き上げた。

「わ、渉!ちょっと降ろして!」

「まどか、暴れないでよ。落ちたら怪我するよ?」

その低い声に私は抵抗する気力を失ってしまう。怖い。結婚してから渉は変わってしまった。
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