君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
逃げたことがバレてしまった。私は慌てて走り出す。男の声はまだ遠い。今ならまだ逃げ切れる。

走っていくと前方に家が見えた。喜んだ私だったけど、その家に近付くと絶望してしまう。その家は空き家だった。これでは助けを呼べない。

「奏〜!」

男の声が近付いてきた。どうして近付いてくるんだろう?そう思いながら私は隠れようと家の中へと入る。空き家となった家は埃まみれで汚い。でもあの男から逃げられるのならと我慢した。

「奏〜!」

男が家の前までやって来る。玄関にそのシルエットが見えた。私は息を殺し、ただ男が立ち去るのを待つ。

「ここにはいないのかな……」

男が離れていく。私がホッと息を吐いたその時だった。玄関のドアが勢いよく開く。私は目を見開いた。

「な〜んてね。騙されないよ」

「あっ、ああ……。こ、来ないで!」

近付いてきた男に私は手当たり次第ものを投げて威嚇した。でも壁際に追い詰められて、手首を押さえ付けられる。

「離して!離してよ、この誘拐犯!」
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