君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
私がそう叫ぶと、頰に痛みが走る。数秒して私は男に頰を叩かれたのだと気付いた。驚いて声が出なくなる。男は私を冷たい目で見ながら言った。

「ご主人のことをそんな風に呼ぶなんて、悪い子だね。僕の名前は真冬（まふゆ）だよ。ほら、呼んでごらん？」

そう言われたものの、私の唇は震えて言葉が出てこない。男は諦めたようにため息を吐くと、懐から私が外した手錠を取り出した。

「奏が手錠を外して逃げても無駄だよ。奏を攫った時、体にチップを埋め込んだからね。だから奏が逃げてもどこにいるかわかるんだよ」

「そんな……！」

攫われた時のことを思い出す。私はマンションで一人暮らしをしていた。深夜、チャイムが鳴ってドアを開けるとそこには警察官の制服を着た男が立っていた。

『ご両親が事故に遭われました。今すぐ一緒に来てください』

今思えば電話もなしに突然警察官が来るなんておかしい。でも、両親が事故に遭ったと聞いて私はパニックになってしまった。男に言われるままパトカーに乗って、眠らされて、気が付いたら山荘に監禁されていた。
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