君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
前くんは肩を上下に大きく動かし、苦しそうにしている。その額には汗が浮かんでいて、彼がここまで来るのに走ってきたんだとわかる。私は慌てて駆け寄った。

「前くん!そんなに慌てなくてよかったんだよ?息は苦しくない?大丈夫?」

「すみません……。でも、美波(みなみ)さんを待たせるわけにはいきませんから……」

「とりあえず座ろう。ね?」

「はい」

二人で浜辺に並んで座る。夏のぬるい風が私たちを撫でていく。汗が噴き出してきそうだ。

前くんは今年の春にこの町に引っ越してきた。元々は横浜で暮らしていたらしいんだけど、体が弱くて空気のいいところに引っ越そうとお母さんが提案し、ここに住むようになったらしい。この浜辺で私は町に来た初日に前くんと出会い、前くんと毎日のように会って遊んだ。でもそれも今日で終わりだ。

「明日、埼玉に帰っちゃうんですよね」

「うん。そろそろ学校も始まるからね。受験だってあるし」

「じゃあ、冬には来れませんね」

「そうだね。でも、春になったら絶対にまた来るよ!」
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