君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
逃げ道
「んっ……。んんっ……」

部屋の中を芋虫のように這って動く。私は後ろ手に縄で縛られているからだ。おまけに口にもガムテープが貼られていて、助けを呼ぶことはできない。

私は今日、剣道部の他校との合流練習試合でアリーナを訪れていた。午前中の稽古と試合を終え、休憩時間にトイレに一人で行った後、何者かに背後から襲われて今に至る。

「くっ……!ううっ……」

薄暗いこの部屋に見覚えはない。アリーナにある空き部屋なのかな。パイプ椅子が折り畳まれていて、埃が薄っすらと積もっている。

(何とかしてこの縄を解かないと……!)

昔、テレビアニメで忍者が縄抜けをしているのを見たことがある。腕を動かして関節を外すってやつだ。でも残念ながら私の体は手首だけではなく、二の腕の辺りもしっかり結ばれているため、関節外しはできない。まあ、できたとしてもやる勇気はないけど。

(縄が解けそうなものはないかな)

こんなことをした犯人が帰って来るまでにこの部屋を出ないと。私は芋虫のように床を這いながら、縄が解けそうなものを探す。
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