君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
「無駄ですよ。ここには今誰もいないんです。どれだけ叫んだって助けは来ませんよ。まあ、そんなところも可愛いんですけどね」

「わ、私をどうするつもりですか!?」

恐怖から涙が溢れていく。そんな私の目元に成瀬先生は顔を近付けてくる。思わず目を閉じると目元に柔らかな感触がした。瞼にキスをされたんだ。ゾワリと鳥肌が立ち、逃れようと手足を動かす。

「ずっとここにいるわけにはいけませんからね、場所を移動しましょう」

成瀬先生がハンカチを服のポケットから取り出す。ドラマの誘拐シーンが頭に浮かび、私は「嫌!やめて!」とひたすら騒いだ。その口がハンカチで塞がれる。

吸ってはいけない。そうわかっていても呼吸をずっと止めてはおけない。苦しくて吸ってしまう。甘い香りがした。その瞬間に瞼が重くなっていく。

「いい子ですね」

成瀬先生が頭を撫でてくる。私はこれからどうなるんだろう。不安と恐怖の中、意識がどんどん遠のいていく。

「今度はもっと厳重に縛っておきましょう」

意識がなくなる前、成瀬先生のそんな言葉が耳に届いた。
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