君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜

沼

私は読書が好き。本の世界に入り込んでいる間は、嫌なことを何もかも忘れることができる。お昼休みになった。お弁当をササッと食べて読みかけの本を開く。

（この先生の新作、来月発売されるんだっけ。絶対に買わなきゃ！）

そう思いながらページをめくっていた時だった。頭から冷たいものが降り注ぐ。

「きゃあッ！」

驚いて本を放り投げてしまった。頭からジュースをかけられていた。クスクスと笑う声が響く。振り返るとクラスの目立つ女子グループがニヤニヤしながら立っていた。

「ごめんなさ〜い。手が滑っちゃった〜」

「そんな本読んでいるから気になって〜」

ニヤニヤする顔と笑い声。耐えられなくなって私は教室を出る。どうして読書が好きなだけでこんな目に逢わなくちゃいけないんだろう。いつからかあの人たちに目をつけられ、嫌がらせを受けるようになってしまった。

「ハァ……」

目の前がぼやける。でもこんなところで泣いてしまうなんてみっともない。唇をただ噛み締める。その時だった。

「明日香（あすか）先輩、それどうしたんですか！？」