君は僕のもの〜ヤンデレ短編集〜
ノック
「胡桃（くるみ）〜？どこに行ったのかな〜？」

あの人の声は驚くほど穏やかで、足取りもゆっくりとしたものだ。それがクローゼットの一つに隠れた私の恐怖を大きくさせた。体が小刻みに震える。口を必死で手で押さえ、恐怖に耐えていた。

始まりは三ヶ月前だった。ごく普通の大学生だった私は、アルバイトの帰りに近道をしようと大通りから裏通りへと入った。裏通りを進むとトンネルが現れる。そこを通ると私の住んでいるマンションへの近道になるため、高頻度でそこを通っていた。だからあの日もいつものように通った。トンネルの途中で無理やり車に乗せられ、気が付くとこの広々とした屋敷に監禁されていた。

「君に一目惚れしちゃったから連れて来ちゃった」

そう笑った誘拐犯は、私とそんなに年が変わらない男の人。私は屋敷の一室に拘束されて監禁されていた。そして来る日も来る日も男の人にお世話をされていた。

男の人は私を大切に扱ってくれた。毎日食事を出してもらえたし、お風呂も毎日入れた。ベッドもふかふかで拘束されているとはいえ、暇つぶしできるものも部屋には用意されていた。
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