わたしのプリンスさま〜冴えない男子の育て方〜
第4章〜イケてる彼女とサエない彼氏〜⑧
ステージからのアナウンスが流れると同時に、いつの間にか、舞台袖に集まっていた男子生徒たちが話しかけてきた。
このひと月ほどで、親しく話すようになったおなじみのメンバーだ。
「瓦木先輩、お疲れ様です。ちょっと、お先に失礼します」
「先輩の出番なのに、割り込んじゃって、申し訳ありません」
突然のことで、あっけにとられているわたしに語りかけてきたのは、浜脇くんと安井くん。
「先週より、ギャラリーが多いよな〜」
「ん〜、ちょっと緊張する……」
一年生の広田くんと平木くんは、自分たちの披露するパフォーマンスのことで、頭がいっぱいのようだ。
そして、そんな彼らを見守るような表情だったアフロヘアーの同級生が、最後に声をかけてきた。
「瓦木、すまん! 我が部の頼りない部長の到着が遅れていて、時間を稼がなきゃならなくなった。急な割り込みで申し訳ないが、アイツには、あとでキッチリと埋め合わせをさせるから……ここは、クラスメートのよしみで、先に舞台に上がらせてくれないか?」
「それは、別に構わないけど……深津くん、三日月祭に来るの?」
「あぁ、SSRクラスの重要アイテムを持って、自宅から、ショートカット・コースを移動中だ! 予定どおりなら、そろそろ、高等部の敷地に入ってても良い頃なんだが………………っと、そろそろ舞台に上がる時間だな。良かったら、瓦木も俺たちのステージを楽しんでくれ!」
彼ら映文研の乱入にも驚いたが、柚寿ちゃんのメッセージのとおり、もう文化祭には来ないと思っていた寿太郎が、本当に学校に向かっているという事実に、それ以上に動揺し、ステージに上がる前に気持ちを整える時間が必要になった自分にとって、彼らが先に舞台に上がってくれるのは、ありがたいことでもあった。
「うん……わかった……今日も、みんなを楽しませてね!」
笑顔で、そう答えると、クラスメートは、
「おう! まかせとけ!」
と、言葉を残し、映文研の後輩たちを引き連れて、ステージに駆け上がっていく。
先週、香子園浜で行われたリハーサルの評判は、すでに校内で共有されているようで、彼らに自己紹介のようなMCは必要ないようだ。
先週と同じダンスナンバーのイントロが流れ始めただけで、ステージ前の数百人の観客からは、
「おお〜〜〜〜〜!」
「うお〜〜〜〜〜!」
という歓声が漏れ出した。
その観衆の声に応えるように、前回よりも大きな動きでリズムを取ったセンターの同級生は、
♪ このブギーがマジだってわかるだろ?
の歌いだしと同時に、さらにダイナミックな動作で両手を大きく開いてダンスを始める。
自分も、先週のステージのあとに、本家ジャミロクワイのミュージック・ビデオを《YourTube》で確認したけど、彼のダンスは、ミュージシャン本人のダンスをかなりリスペクトしていることがわかった。
そして、その直後に流れる
♪ 俺は神への信仰で救われていた
♪ だけどそうしたら天国へ行くチャンスを逃してしまった
♪ 俺は未来を心配していた
♪ だけど今は全然ビビっちゃいない
というセンテンスからは、二年生のふたりが、センターで踊る上級生に負けじと大胆な動きを披露し始める。
期待どおりのパフォーマンスに、観客の歓声はさらに高まる一方だ。
♪ こんなにお気楽でいられるわけなかった、無理、無理、無理
♪ 街の向こう側に出かけるまではね、そう、そう、そう
観客の盛り上がりは、そのままステージ上にも伝わっているのだろう。
最後に控えていた一年生も上級生に加わり、五人体制のダンサーたちは、先週以上にエネルギッシュにダンスを披露する。
♪ つまり、俺はあのブギーのリズムを聴いたってことさ
♪ そう! 踊らずにはいられなくなったんだ
曲が一番盛り上がる部分が近づくと、彼ら五人は全員で「カモン! カモン!」と、両手を広げてギャラリーをあおるような仕草を見せて――――――
♪ Dance! 俺にはおどることしかできないんだ
ダンス! の歌声に合わせ、は大きく飛び跳ねて、今日も美しい音ハメを決めてみせた。
数百人は集まっていると思われる観客のテンションは爆上げ。
「Hu〜〜〜〜〜!」
という海外のアーティストに送るような声援まで聞こえてくる。
しかし、ワン・コーラスで終了した前回のダンスと違い、今日の映文研のパフォーマンスは、ここで終わらなかった。
♪ 電流が駆け巡り 稲妻が走っているのを感じる
♪ この怒りは神からのプレゼントさ
ツー・コーラス目のダンスでは、センターの三年生が、下級生のソロダンスをフォローするような動きを見せつつ、センテンスの後半では、ふたりでデュオの動きを披露する。
まず最初の相手は、ステージ右手側の浜脇くんだ。
♪ ただ、直感でピンと来たんだよ
♪ こんな感触は いままでかんじたことなかった
歌詞が次のパートにうつると、今度はステージ左手側に注目をうながし、安井くんのダンスをフィーチャーする。
前回は見られなかった下級生のソロ・パートのダンズが見事に決まるたびに、ステージの前からは大きな拍手が湧き上がった。
さらに、楽曲も終盤を迎え、曲のタイトルにもなっている
♪ Canned Heat My Heels = 踊り狂ってやるぜ
のフレーズが繰り返される箇所にさしかかると、一年生の広田くん平木くんも無事にソロダンスを終えて、すっかり観客のココロを掴んでいるようだった。
そして、最後の
♪ 今夜は踊り狂ってやるさ
のフレーズで肩を組んだ五人は、そのままリズムにノリながら、ステージ前の観衆に揃ってお辞儀をしたあと、
♪ このブギーがマジだってわかるだろ?
の歌詞に合わせて、固まったまま、舞台の袖に移動してきた。
ステージの前では、映文研のメンバーに対して、盛大な拍手と歓声が鳴り止まない。
それは、これまで学内では、腫れ物に触るような扱いを受けていた彼らが、一転して、全生徒から注目を浴びる存在になったことが、はっきりとわかる光景でもあった。
このひと月ほどで、親しく話すようになったおなじみのメンバーだ。
「瓦木先輩、お疲れ様です。ちょっと、お先に失礼します」
「先輩の出番なのに、割り込んじゃって、申し訳ありません」
突然のことで、あっけにとられているわたしに語りかけてきたのは、浜脇くんと安井くん。
「先週より、ギャラリーが多いよな〜」
「ん〜、ちょっと緊張する……」
一年生の広田くんと平木くんは、自分たちの披露するパフォーマンスのことで、頭がいっぱいのようだ。
そして、そんな彼らを見守るような表情だったアフロヘアーの同級生が、最後に声をかけてきた。
「瓦木、すまん! 我が部の頼りない部長の到着が遅れていて、時間を稼がなきゃならなくなった。急な割り込みで申し訳ないが、アイツには、あとでキッチリと埋め合わせをさせるから……ここは、クラスメートのよしみで、先に舞台に上がらせてくれないか?」
「それは、別に構わないけど……深津くん、三日月祭に来るの?」
「あぁ、SSRクラスの重要アイテムを持って、自宅から、ショートカット・コースを移動中だ! 予定どおりなら、そろそろ、高等部の敷地に入ってても良い頃なんだが………………っと、そろそろ舞台に上がる時間だな。良かったら、瓦木も俺たちのステージを楽しんでくれ!」
彼ら映文研の乱入にも驚いたが、柚寿ちゃんのメッセージのとおり、もう文化祭には来ないと思っていた寿太郎が、本当に学校に向かっているという事実に、それ以上に動揺し、ステージに上がる前に気持ちを整える時間が必要になった自分にとって、彼らが先に舞台に上がってくれるのは、ありがたいことでもあった。
「うん……わかった……今日も、みんなを楽しませてね!」
笑顔で、そう答えると、クラスメートは、
「おう! まかせとけ!」
と、言葉を残し、映文研の後輩たちを引き連れて、ステージに駆け上がっていく。
先週、香子園浜で行われたリハーサルの評判は、すでに校内で共有されているようで、彼らに自己紹介のようなMCは必要ないようだ。
先週と同じダンスナンバーのイントロが流れ始めただけで、ステージ前の数百人の観客からは、
「おお〜〜〜〜〜!」
「うお〜〜〜〜〜!」
という歓声が漏れ出した。
その観衆の声に応えるように、前回よりも大きな動きでリズムを取ったセンターの同級生は、
♪ このブギーがマジだってわかるだろ?
の歌いだしと同時に、さらにダイナミックな動作で両手を大きく開いてダンスを始める。
自分も、先週のステージのあとに、本家ジャミロクワイのミュージック・ビデオを《YourTube》で確認したけど、彼のダンスは、ミュージシャン本人のダンスをかなりリスペクトしていることがわかった。
そして、その直後に流れる
♪ 俺は神への信仰で救われていた
♪ だけどそうしたら天国へ行くチャンスを逃してしまった
♪ 俺は未来を心配していた
♪ だけど今は全然ビビっちゃいない
というセンテンスからは、二年生のふたりが、センターで踊る上級生に負けじと大胆な動きを披露し始める。
期待どおりのパフォーマンスに、観客の歓声はさらに高まる一方だ。
♪ こんなにお気楽でいられるわけなかった、無理、無理、無理
♪ 街の向こう側に出かけるまではね、そう、そう、そう
観客の盛り上がりは、そのままステージ上にも伝わっているのだろう。
最後に控えていた一年生も上級生に加わり、五人体制のダンサーたちは、先週以上にエネルギッシュにダンスを披露する。
♪ つまり、俺はあのブギーのリズムを聴いたってことさ
♪ そう! 踊らずにはいられなくなったんだ
曲が一番盛り上がる部分が近づくと、彼ら五人は全員で「カモン! カモン!」と、両手を広げてギャラリーをあおるような仕草を見せて――――――
♪ Dance! 俺にはおどることしかできないんだ
ダンス! の歌声に合わせ、は大きく飛び跳ねて、今日も美しい音ハメを決めてみせた。
数百人は集まっていると思われる観客のテンションは爆上げ。
「Hu〜〜〜〜〜!」
という海外のアーティストに送るような声援まで聞こえてくる。
しかし、ワン・コーラスで終了した前回のダンスと違い、今日の映文研のパフォーマンスは、ここで終わらなかった。
♪ 電流が駆け巡り 稲妻が走っているのを感じる
♪ この怒りは神からのプレゼントさ
ツー・コーラス目のダンスでは、センターの三年生が、下級生のソロダンスをフォローするような動きを見せつつ、センテンスの後半では、ふたりでデュオの動きを披露する。
まず最初の相手は、ステージ右手側の浜脇くんだ。
♪ ただ、直感でピンと来たんだよ
♪ こんな感触は いままでかんじたことなかった
歌詞が次のパートにうつると、今度はステージ左手側に注目をうながし、安井くんのダンスをフィーチャーする。
前回は見られなかった下級生のソロ・パートのダンズが見事に決まるたびに、ステージの前からは大きな拍手が湧き上がった。
さらに、楽曲も終盤を迎え、曲のタイトルにもなっている
♪ Canned Heat My Heels = 踊り狂ってやるぜ
のフレーズが繰り返される箇所にさしかかると、一年生の広田くん平木くんも無事にソロダンスを終えて、すっかり観客のココロを掴んでいるようだった。
そして、最後の
♪ 今夜は踊り狂ってやるさ
のフレーズで肩を組んだ五人は、そのままリズムにノリながら、ステージ前の観衆に揃ってお辞儀をしたあと、
♪ このブギーがマジだってわかるだろ?
の歌詞に合わせて、固まったまま、舞台の袖に移動してきた。
ステージの前では、映文研のメンバーに対して、盛大な拍手と歓声が鳴り止まない。
それは、これまで学内では、腫れ物に触るような扱いを受けていた彼らが、一転して、全生徒から注目を浴びる存在になったことが、はっきりとわかる光景でもあった。