あの夏で待ってる



中学校受験をして、晴れて県外の第一志望に合格した私は

みんなより一足早くこの街から離れた。

生まれてから死ぬまで、この街に居続ける人が多いこんな田舎

県外の学校に通う、というだけで周りはとても驚いた顔をした



毎日帰る家はもちろんここにあるけど、朝早くに家を出て、夜遅くに帰ってくるような生活だと

友人とばったり会うなんて機会もなく、

この街に住んでいるという感覚はすぐになくなった。



中1の秋の卒業アルバムの受け取りにも、

中学の卒業を祝う、ミニ同窓会にも行っていない

単純に帰ってくる時間なんかが間に合わなかったのもあるし



「はるかはほんとにすごいね」

「天才じゃん」

「うちの学校の希望だから!」



期待されればされるほど、そんなに立派な人間じゃないということを知られるのが怖くて

何より



「はるかとは生きてく世界が違うんだな」



こんな、あいつ・・彼氏だったあいつからの最後の言葉は

私がここに帰るのを躊躇するのに十分だった。


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