あの夏で待ってる
そういって、校庭を出てどこかへ歩き出すたくみ
「ねぇ、どこ行くの」
「んー?」
ずんずん歩くその後ろ姿はだいぶ大きくなっていて
また過ぎた時間を感じさせられる
「あ、」
「思い出した?」
向かっているのは、あの日最後に別れた川岸だ
ちょっと待っててとどこかに走ったたくみを見送って土手に座った
この景色だけは何も変わっていない
「ふぅ、」
「おまたせ」
差し出されたコーラの缶を受け取る
「ありがと」
「元気にしてた?」
「まー、そこそこ」
「全然帰ってこないからさ、みんな心配してた」
「帰っては来てるから・・覚えてないよ、みんな」
「は?」
「なに」
「何言ってんの?」
「・・たくみぐらいでしょ、よっぽどのもの好き」
「いやいや、中学入ってからも高校出てからもことあるごとに思い出してたからね、みんな
1学年15人の田舎なめんなよ?笑」
「・・・」
「・・俺らはるかのこと縛ってたかなって」