君と私のウラオモテ

第2話【それぞれの裏の顔】

●凜乃の家、お風呂の脱衣室前

凜乃「壱科くーん、タオル持ってきたよ!」
<わざと明るくした調子で声をかける、手にタオルを持っている>

<ガラッ>
<勢いよくドアを開けてしまう>

昂輝「は?」
<まだ上半身裸だった昂輝が中にいた>

凜乃「え、……あっ、わー!?」
<立ち尽くす>
<ハッとして、真っ赤になり声を上げる>

昂輝「ちょ、勝手に開けんなよ!」
<焦る>

凜乃「ごごごごめん! まだお風呂場だと思って!」
<真っ赤になり、あわわ……という様子>

昂輝「あっそ。いいから、貸してくれんだろ。ちょうだい」
<ジト目で凜乃を見て、手を差し出す>

凜乃「ハイ……」
<視線を逸らしながらタオルを渡す>

昂輝「ったく……あんたのせいでこんな目に遭うとは」
<頭にタオルをかけ、ごしごし拭く、不満げ>

凜乃「ほんとにごめん……」
<しゅんとする>

凜乃(でも……)
<チラッと昂輝を見てしまう>

凜乃(髪が濡れて掻き上げられてて、はっきり見える……)
凜乃(眼鏡もなしだし)
凜乃(こうして見ると……『コウ』にしか見えないよ……)
<上半身裸の昂輝の様子、コウにしか見えなくて、すごくセクシー>

昂輝「なんだよ。じろじろ見るなよな」
<不審そうに凜乃を見る>

凜乃「はっ! し、失礼しました……」
<ハッとして、改めて赤くなる>

昂輝「はぁ……。それってさ」
<呆れたような顔でため息>

凜乃「え?」

昂輝「俺が『コウ』だから? それとも……」
<ずいっと凜乃のほうへ身を寄せる>
<ちょっと面白そうな、挑発するような様子>

凜乃「……え」
<急に近くへこられて、ぽかんとする>

昂輝「裸の姿で、なにか想像したとか……?」
<凜乃を壁ドンする形で迫る>
<艶っぽい様子で囁く>

凜乃「はぁっ!?」
<赤くなり、変な声が出てしまう>

昂輝「いいぜ、口止めの代わりに、ちょっとくらい付き合ってやっても」
<からかうように、凜乃の頬に触れる>

凜乃「わ、わー! けけけけ結構です!」
<真っ赤になり、全力で昂輝の胸を押し返す>

昂輝「そう。つまんねぇの」
<スッと引く>

凜乃(なんでそうなるの!?)
<心臓バクバクで昂輝を見ている>

昂輝「でも本当に口止めはしないとな」

凜乃「だ、誰にも言わないよ!」
<焦って弁明する>

昂輝「信用できるかよ。今までまともに話したこともないのに」
<ジト目でズバッと言う>

凜乃「それは……そうかもしれないけど」
<声が濁る>

昂輝「でも、まぁ」

凜乃「ん?」
<不思議そうな顔>

昂輝「とりあえず着替えるから出てって」
<ぽいっ>
<凜乃の首根っこを掴んで、脱衣室の外へ放り出す>
<ギャグっぽく>

凜乃「ひ、ひど! こんなやり方!」
<外へ放り出されて、廊下にへたりこむ凜乃、憤慨する>

凜乃「もうっ! あの壱科くんがこんなひとだなんて、知らなかった!」
<ぷんぷんしている>

凜乃(そうだよ、想像なんてできるわけないじゃん)
<もやもや考えてしまう>

凜乃(あのクラくて地味な壱科くんが……)

凜乃(大人気モデルのコウだなんて、そんなことある!?)

凜乃(正体バレた瞬間、態度まで正反対だし!)

凜乃(でもどう見ても疑う余地なんかないよ!)

凜乃(あの顔も体つき……も……)

<昂輝のセクシーな様子を思い出してしまう>
<ボッ>
<顔が真っ赤になる>

凜乃(ああ、いやいや、あっちは思い出さないでおこう)
<焦ってブンブンと首を振る>

凜乃「……はぁ」

凜乃「とりあえず、お茶でも淹れよ……」
<立ち上がり、すごすごと廊下を歩いて、キッチンへ向かう>


●その後、リビング

昂輝「ん、美味い」
<リビングのソファでお茶を飲む2人>
<ティーカップの紅茶と、クッキーが並ぶ>
<チョコチップクッキーをひとくちかじって、嬉しそうな昂輝>

凜乃「それは良かった……」
<まだちょっと引きずっている凜乃、少し視線が泳ぎながら返事>

昂輝「もしかして、俺がコレ好きだってどっかで見た?」
<食べながら聞いてくる>

凜乃「え、うん。なんだったかなー、ネットのインタビューで、チョコチップクッキーが好きって……」
<何気なく答える>

昂輝「ふぅん。よく見てくれてんだ」
<ちょっと嬉しそう>

凜乃「あ、いやいや、香織に勧められたからだよ。私は別に……」
<ハッとして、説明する>

昂輝「ファンじゃねぇの?」

凜乃「え?」

昂輝「なーんだ。残念」
<わざとらしく残念がる>

凜乃「な、なんで残念ってことに?」
<理由がわからず、おろおろする>

昂輝「いや、だってさ」

凜乃「……えっ」

昂輝「ファンだっていうなら……こうしたら」
<ずいっ>
<凜乃のほうへ寄る、顔を近付ける>

凜乃「わ、わ!」
<近さに赤くなり、慌てる>

昂輝「喜ぶ……かなって?」
<至近距離で、くすっと笑う>

凜乃「~~~っ、からかわないでよ!」
<真っ赤になり、昂輝を押し返す>

昂輝「おっと」
<素直に引く>

凜乃「私はコウくんのファンじゃないし、あ、ああいう……ことで誤魔化されたりもしませんっ!」
<赤い顔で睨みつけるように言い放つ、動揺している>

昂輝「じゃあなんで動揺するんだよ。敬語にまでなってさぁ」
<よくわからない、不審だという顔>

凜乃「そ、そりゃああんなこと……」
<赤くなり、視線が泳ぐ>

昂輝「ちょっと近くなっただけじゃん」

凜乃「いやいや、ちょっとじゃないし」

昂輝「もしかして、こういうこと、慣れてない?」
<思い当たって口に出す>

凜乃「はぁ!?」
<赤くなり、変な声が出る>

昂輝「へー、見た目によらず、結構ウブなんだ」
<にやにやする>

凜乃「なっ……見た目は関係ないじゃん! それにめっちゃ失礼……、え」
<知られて図星、真っ赤になりおろおろ>
<勢いよく言い返したが、声が止まる>

昂輝「じゃあ、好都合だな」
<しれっと言う>
<再び凜乃の前まで迫り、顎に触れてくる>

凜乃「なにが、……っ!?」
<急に距離を詰められて、目を見開く>

<昂輝からキス>

昂輝「……ふ」
<数秒だけキスをして、息をついて離れる>

凜乃「……は」
<呆然と固まる>

昂輝「ふふ、面白い顔」
<むに>
<悪い顔で笑って、凜乃の頬を摘まむ>

凜乃「……っはー!?!?!? ななななにすんの!?」
<やっと現実を把握した>
<真っ赤な顔で声を上げる、動揺>

昂輝「なにって、キスしかないだろ」
<しれっと言う>

凜乃「ひ、酷いっ! わ、わ、私の……」
<泣き出しそうな顔、おろおろしている>

昂輝「ファーストキス?」
<しれっと口に出す、面白そうな顔>

凜乃「う、うるさいよ!」
<さらに赤くなり、睨みつける>

昂輝「あんな様子でそうじゃないわけないよな。でも、ま、これでいい」
<満足げ>

凜乃「なにがいいのっ!」
<涙目で怒鳴る>

昂輝「これであんたは俺のものだ。あんたは俺の秘密を絶対に口外しない。代わりに俺は、あんたを俺のものにして、口外する余裕なんて作らせない」
<にやりとし、とつとつと語る>

凜乃「なにその理屈……」
<涙目で、顔をしかめる>

昂輝「筋は通ってると思うけどな」

凜乃「通ってないよ! き、き……す、なんてして!」
<『キス』を言い淀んでしまう、ウブでかわいい様子>

昂輝「ふはっ、『キス』も言えないとは。かわいいじゃん」
<噴き出し、面白そうに笑う>

凜乃「だからぁ!」
<真っ赤な顔で抗議する>

昂輝「ま、大丈夫だって。責任は取るから」
<ポン>
<凜乃の肩に手を置く>

凜乃「なんの!」

昂輝「なんのって……あんたの彼氏になるって意味だけど」
<さらりと言う>

凜乃「……はぁぁ!?」
<真っ赤になり、変な声を張り上げる>

昂輝「秘密の共有ならそれが手っ取り早い。というわけで、よろしくな」
<にやっと笑う>
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