君と私のウラオモテ

第3話【きみの瞳の中に】

●翌朝、学校の廊下

いったいなにがどうなったか。
壱科くん……いや、コウくん? と付き合うことになってしまった私。
でも……。
<むむ……という顔で廊下を歩いている>
<登校してきたところ>


●教室

凜乃「あ、おはよう」
<凜乃が教室に入ると昂輝がいた>
<ちょっとドキッとしながら挨拶する>

昂輝「あ……うん」
<陰キャ姿の昂輝、おどおどした様子で返事>

凜乃(あれ?)
<不思議に思う>

凜乃「あの、壱科くん」
<もっと話そうとして、続ける>

昂輝「お、俺、もう行くね」
<おどおどした様子でそそくさと行ってしまう>

凜乃「……? うん」
<不思議に思う>

付き合うと言った割には、学校での壱科くんは、元通り、誰とも関わらない陰キャのまま……。
<ぽつんと取り残されて、不思議に思う>


●放課後、天文部部室

<ガラッ>
<部室のドアを開けて入る凜乃>

凜乃「失礼しまーす……」
<おずおずと声をかける>

壱科くんは天文部所属。
「放課後、部室に来て」ってメモを渡されたから、来てみたけど……。

昂輝「……ああ、あんたか。入って」
<1人で中にいた昂輝、振り向く>
<陰キャ姿だが、しゃべり方は俺様になっている>

凜乃「う、うん」
<おずおずと中へ入る>

昂輝「今日はほかにひと、いないから」
<観測器具や、色々の機材がある天文部部室>
<学校の校舎の最上階にある部室、天井はドーム状で空が見えている>
<観測器具をいじりながら、さらりと説明>

凜乃「そうなんだ……」

凜乃(だからこないだみたいな態度なの?)
<なんとなく考え事>

昂輝「適当に座ってて」

凜乃「うん……」
<パイプ椅子に座る>
<部屋にある機械などを見てきょろきょろしている>

凜乃「あの」
<間が持たなくて、声をかける>

昂輝「なに」
<機材をまだいじりながら、凜乃を見ずに返事>

凜乃「私と壱科くんって……、つ、付き合うんじゃなかったの?」

昂輝「そういうことだけど?」

凜乃「それにしては……その」
<声が濁る>

昂輝「そっけない、って?」
<振り向いてくる>

凜乃「いや、その、ね……」
<歯切れ悪く返事>

昂輝「……こういうほうがいい?」
<体を乗り出して、ずいっと寄ってくる>
<凜乃の目の前に来る>

凜乃「い、いやいやそうじゃないけど!」
<赤くなって、胸の前で手を振る>

<ガタッ!>
<凜乃が焦って体を引いたので、椅子が音を立てる>

昂輝「ったく……もう1回キスしてるのに」
<不満げに身を引く>

凜乃「いいなんて言ってなかったよ!」
<憤慨する>

昂輝「事実に変わりはないだろ」
<しれっと一蹴>

凜乃「うう……ひっど……」
<完全にやり込められて、がっくり>

昂輝「あんたが秘密を知っちゃったせいなんだからな。で、学校での態度がご不満だって?」
<しれっと言い、話を元に戻す>

凜乃「そうじゃないけど……」
<声が濁る>

昂輝「だってあんたは『コウ』の彼女なんだから、陰キャの壱科と付き合う必要ないでしょ」
<しれっとしている態度>

凜乃「そういうものかなぁ」

昂輝「そういうもんなんだよ」

凜乃(ほんとに違い過ぎじゃない!?)

凜乃(なんか俺様っぽいしっ!)
<内心、ギャップに混乱している>

昂輝「これで良し」
<機材をいじるのをやっと終えた>
<納得がいった顔>

凜乃「ん? なにが?」
<そちらに興味を惹かれる>

昂輝「なにって、観測準備が」

凜乃「観測? 確かにここ、天文部部室だけど……まだ夕方じゃない」
<きょろきょろする>

昂輝「夕方一番の星を見に来たんだよ」

凜乃「それって?」

昂輝「なんだよ、そのくらいも知らねぇの? (よい)明星(みょうじょう)ってあるだろ」
<ちょっと馬鹿にした態度で言う>

凜乃「……あー! あれね! 金星!」
<少し考え、思いついた顔で正解を言う>

昂輝「なんだ、わかるんじゃん」
<くすっと笑う>
<優しい笑み>

凜乃「!」
<意外な笑顔にドキッとしてしまう>

昂輝「じゃあちょうどいい。あんたも見たら」
<機材(望遠鏡)を指差して勧める>

凜乃「いいの?」
<興味を示す>

昂輝「おう」

凜乃「じゃあ……お借りして……」
<すすっと前へ寄る>

昂輝「どうぞ」

凜乃「わぁ、すごい! こんなはっきり見えるんだぁ」
<望遠鏡を覗いた凜乃、明るい声ではしゃぐ>
<美しい金星が見えた>

昂輝「綺麗でしょ」
<隣に立ちながら、ちょっと満足げに言う>

凜乃「うん! 私、望遠鏡なんて初めてだよ!」
<はしゃいで、満面の笑みを浮かべる>
<無邪気でかわいい>

昂輝「初めて、か」
<ぼそっと言う>

凜乃「ん?」

昂輝「そろそろ俺にも見せてくんない?」
<凜乃のほうへ一歩踏み出す>

凜乃「あ、うん!」
<望遠鏡を覗きたいのだと思って、退こうとする>

凜乃「……!」
<けれど昂輝が来たのは凜乃の目の前だった>
<目と鼻の先まで来て、ずいっと凜乃の顔を覗き込む>
<ドキッとする凜乃>

昂輝「……うん。綺麗に見える」
<凜乃の瞳をじっと見つめて、満足げ>

凜乃「なっ、なにが……」
<間近で見つめられて、赤くなり、動揺>

昂輝「明星が。あんたの目の中に」
<さらりと言う>

凜乃「……え?」
<ぽかんとする>

昂輝「知らない? 美しいものが心に焼き付くと、瞳に映るって」

凜乃「し、……らないよ、初めて聞いた……」
<動揺しながら呟く>

昂輝「そう。まぁ、俺が勝手に信じてることだから」
<スッと離れる>

凜乃「そっか……」

凜乃(びっくりしたぁ……)
<離れられて安心したが、ドキドキしている>

昂輝「うん、今日は撮影はいいや」
<望遠鏡の具合を見て、元の話題に勝手に戻る>

凜乃「いいの? せっかく望遠鏡セットしたのに」
<少し拍子抜けする気持ちで聞く>

昂輝「撮影は別の機械でするんだよ」

凜乃「なるほど」

昂輝「それに、今日は自分の目で見られたから満足だ」
<凜乃を振り向き、優しく満足げな笑顔>

凜乃「!」
<ドキッとする>

凜乃(こんな顔もするんだ……)
<少し見入ってしまう>

昂輝「さ、長居しちゃったな。行くか」
<立ち上がり、凜乃を促す>

凜乃「え、どこへ? 帰らないの?」
<不思議そう>

昂輝「帰りに寄ってくとこがある。あんたにも付き合ってもらうから」
<通学バッグを取り上げながら、振り向く>

凜乃「うん……?」
<自分も立ち上がりながら、不思議そう>


●芸能事務所の前
(事務所はビルの上階にある)

凜乃「え、ここって」
<ビルを見上げて、ぽかんとする>

昂輝「ああ、俺の所属事務所」
<さらりと答える>

凜乃「え、えっ! なんで私を!?」
<驚いて昂輝を見る>

昂輝「あんたを紹介しとかないとだから」

凜乃「なんで!?」

昂輝「マネに言っとかないといけない決まり。一応、芸能人なんだから」

凜乃「そういうもんなの……?」

昂輝「一般人のあんたは知らないと思うけど、色々ややこしいんだよ」
<少し馬鹿にする感じ>

凜乃「む……そりゃ、縁のない世界だけど、そんなふうに言わなくても」
<ちょっとムッとした>

昂輝「実際そうだろ。さ、入るぞ」
<ビルのエントランスから入る>
<スーッと自動ドアが開く>

凜乃「は、はい……お邪魔、します……」
<緊張しつつ、続いて入ろうとする>
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