君と私のウラオモテ

第4話【芸能事務所にて】

●芸能事務所オフィス

凜乃「お邪魔、します……」
<入り口からおずおずと入る>
<キラキラした現代的なオフィス>
<緊張している>

昂輝「おはようございます」
<さらりと挨拶する昂輝>

凜乃(ん?)
<少し引っかかる>

篠宮(しのみや)「コウくん、いらっしゃい」
<奥から出てきた篠宮が近付いてくる>

昂輝「ふぅ。お疲れ様です」
<眼鏡を外して、髪も少し掻き上げながら、挨拶>
<やれやれという様子>

篠宮「ふふ、やっぱりあの姿だとまったくわからないな」
<少しコウに近付いた姿になった昂輝を見て、面白そうに笑う>

昂輝「褒め言葉として受け取っときます」
<眼鏡をしまいながら、不敵に微笑する>

篠宮「ええ、好都合よ。厄介なファンに見られると困るからね」
<同じような笑みを浮かべる>

昂輝「そうっすね」

凜乃(あの、壱科くん)
<隣へ寄り、ひそひそと聞く>

昂輝「なんだよ」
<凜乃を見て、軽く返事>

凜乃(気になったんだけど……)

昂輝「なにが」

凜乃(なんで夕方なのに「おはようございます」なの……?)
<さっきの挨拶の意味がわかっていない>

昂輝「は?」
<きょとんとする>

篠宮「ぷっ……マイペースな彼女さんね」
<口元に手をやり、笑う>

凜乃「へ?」
<どうして笑われたのかわからない>

昂輝「はぁ……あんたさぁ、もっとほかに気にするとこあんだろ」
<軽くため息>

凜乃「え、え?」
<おろおろする>

昂輝「緊張したりきょろきょろするかと思ったのに、案外図太いのな」
<悪い笑み>

凜乃「なっ……」
<ハッとするのと、イラッとするのを同時に感じる>

篠宮「業界ではその日、一番に会ったら「おはようございます」が挨拶なのよ」
<そこで篠宮がさらりと説明してくれた>

凜乃「そ、そうだったんですか」
<やっと納得できた>

篠宮「ええ。コウくんの彼女っていうなら、そういうことも知っておいたほうがいいわ」
<優しい微笑>

凜乃「はい……」
<ちょっと肩を縮めて答える>

篠宮「じゃあ、こちらへ。詳しく話を聞きましょう」
<奥を示す>


●応接室

篠宮「改めて、コウくんのマネージャー・篠宮です。よろしくお願いします」
<ソファに腰掛け、挨拶が始まる>
<綺麗な姿勢で座り、丁寧に挨拶する>

凜乃「はい! わ、私、二条 凜乃です! ……その……」
<向かいのソファに腰掛けた凜乃、膝の上で手を握って緊張した様子>
<緊張全開で挨拶>
<続きは言い淀んでしまう>

昂輝「俺の彼女です。こないだから付き合うことになりました」
<手を出して凜乃を示し、丁寧に挨拶する>

凜乃(付き合うことになったっていうか……付き合うことにされたっていうか……。うう、改めて自覚すると恥ずかしい……)
<赤くなり、うつむいてしまう>

篠宮「ふふ、かわいい彼女さんねぇ」
<凜乃のウブな様子を見て、微笑ましいという顔で笑う>

凜乃「そ、そう……でしょうか……」
<もそもそ答える>

篠宮「ええ。でもコウくんに彼女ができるとは意外だったな。まぁ、お年頃だし、ちゃんと報告してくれたから大丈夫よ」
<昂輝に視線を戻し、優しい言葉>

昂輝「ありがとうございます」

篠宮「さて、ではうちの事務所の交際規約についてがこちら。コウくんには昨日、メールで送ったけど」
<中央のテーブルの上に、書類をスッと出す>
<白い紙、何枚か重ねられている>

昂輝「はい」

篠宮「主に二条さん。目を通しておいてね」
<凜乃に視線を向ける>

凜乃「は、はい!」
<ドキッとし、姿勢を正して返事>

篠宮「コウくんは芸能人だし、うちの事務所でもトップだから。スキャンダルなんて出ないようにしたいからね」
<優しくもきっぱりした言い方>

凜乃「そ、そうですよね! 拝見します!」

凜乃(うわ……なんかややこしそう……)
<書類を覗き込んだ凜乃>
<書類には難しい言葉で規則が書き連ねられている>
<難しい顔になる>

凜乃(なんで私、望んでないのにこんな状況になってるんだろう……)
<少し理不尽に思う>


●事務所の入り口

篠宮「……じゃあ、今日はこのへんで」
<入り口で帰ろうとしている昂輝と凜乃に向かい、笑顔で見送る篠宮>

昂輝「はい。篠宮さん、わざわざお時間取っていただき、ありがとうございました」
<丁寧に挨拶し、ぺこっと頭を下げる>

凜乃(あれだけ態度が大きかったのに、丁寧なところは丁寧なんだよね……。やっぱり芸能人なんだし、お仕事をしてるんだなぁ)
<チラッと見て、尊敬する>

篠宮「二条さんも、これからよろしくね」
<凜乃に視線を向けて微笑する>

凜乃「はっ、はいっ!」
<緊張した顔で返事>

昂輝「では、失礼します」
<事務所のドアを開ける>


●1階、ビルのロビー

凜乃「はぁ~、緊張したなぁ」
<現代的なロビー、まだビル内なのでひとはほとんどいない>
<事務所からエレベーターで降りてきたところの凜乃、大きくため息>

昂輝「ふふ、ほんっとあんたって見た目によらないよな」
<くすっと笑う>

凜乃「は?」

昂輝「ギャルなんだし、もっと態度が大きいかと思ってた」
<失礼なことをズバッと言う>

凜乃「なにそれ! 私だって、場くらいわきまえるし! それに壱科くんだって、いつもの見た目からは想像もできないよ!」
<ムッとした>

昂輝「ふぅん。じゃ、まぁ、その点は似てるとこ、って思っていいんじゃない」
<にまっと笑う>

凜乃「ポジティブすぎない?」
<少し呆れる>

昂輝「お褒めの言葉、ありがとう。じゃ、今日は……」
<しれっと答え、なにか切り出そうとする>
<バッグから眼鏡ケースを取り出す>

凜乃「あ、うん。そろそろ帰ろうか」
<帰るのだと思って、そのまま言う>

昂輝「あ? 帰る?」
<変な顔をする>

凜乃「? だってもう用事は済んだんでしょ」
<不思議そう>

昂輝「はぁー……。あのなぁ、俺とあんたは付き合ったんだよ」
<ため息、呆れた様子>

凜乃「あ……そう、だけど。それが……?」
<照れてしまう>
<でもまだわかっていない>

昂輝「だから!」
<ちょっと焦れてきた顔>

凜乃「……!」
<ずいっと目の前に顔を寄せられて、ドキッとする>

昂輝「いくら事務所に寄ったからって、そのまま帰るなんて味気ないだろ!」
<呆れ返った顔で言って聞かせる>

凜乃「はぁっ!? そ、そういうもん!?」
<思考になくて、驚いてしまう>

昂輝「普通はそうだろ……健全にバイバイする恋人同士がどこにいるよ」
<呆れたという顔>

凜乃「い、いや、その……」
<やっと思い当たった>
<頬を染め、おろおろする>

昂輝「ま、キスも知らなかったようなやつは知らなくて当然か」
<馬鹿にするように言う>

凜乃「なにかにつけて、言わないでよ!」
<素直に赤くなり、言い返す>

昂輝「はいはい。ま、そういうわけだから」
<軽くいなす>
<眼鏡ケースを開けて、眼鏡を出す>

凜乃「……どっか行くの?」
<ちょっと勢いが落ちた凜乃、聞いてみる>

昂輝「ん? いいとこだよ」
<眼鏡をかけながら、不敵に返事>

凜乃「……ヘンなことしないでしょうね」
<警戒>

昂輝「信用ねぇな」
<しれっと言う>

凜乃「いきなりキ……スなんてする男、信用できるわけないじゃん!」
<赤くなり、どもりながら叫ぶ>

昂輝「あっそ。ま、いいや。行くぞ」
<しれっと言い、前髪を下ろし、陰キャ姿に戻る>
<凜乃を促し、外へ向かう>

凜乃「あ、ちょ、ちょっと待ってよ……」
<おろおろしながらついていく>
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