雷の夜に 〜憧れ上司と二人きりの残業は甘くて〜
「意外だっただけです」
私はうつむいたまま答える。お願いごまかされて。
「好きな人が君だって言ったら、どういう表情を見せてくれるのかな」
嘘!
反射的に顔を上げると、やっぱり微笑している課長がいて、私はまた顔を伏せた。
本当ならどんなにうれしいだろう。
それきり、部屋には沈黙が降りた。
ざあざあと降る雨の音が部屋に満ちる。
課長は決定的なことを言っていない。だからまだ、からかわれているだけの可能性だってある。
だから舞い上がるな、自分。落ち着け。
自分にそう言い聞かせているのに。
課長は私の肩を抱き寄せ、耳に囁く。はちみつのように濃密に甘く。
「個人的に連絡先を聞いてもいいかな」
私は声が行方不明になったかのように無言で立ち尽くしていた。
「嫌なら断ってくれてかまわない」
課長の声に、私は小走りに走った。
机の引き出しを開けてスマホを取り出し、すぐさま課長のところに戻ると、スマホを差し出す。課長の顔は見れなかったが、戸惑う気配が伝わって来た。
「それは……教えてくれる、ということでいいのかな?」
私はこくこくとうなずく。
課長がプッと噴出した。
「ときどき、そういう面白い反応するよね」
面白いことをしているつもりはないのに。
ちらりと目を上げると、課長の満面の笑みが見えた。
連絡先を交換すると、課長は言った。
「必ず連絡するから」
胸がきゅんとした。
どうしてただそれだけの言葉が私をとろかしていくのだろう。
「私も……必ずお返事します」
私は自分のスマホを見つめる。
課長のフルネームが入った画面が、雷光よりも輝いて見えた。
いつしか雨は止んでいて、課長の甘い視線がたっぷりと私に降り注いでいた。
終
私はうつむいたまま答える。お願いごまかされて。
「好きな人が君だって言ったら、どういう表情を見せてくれるのかな」
嘘!
反射的に顔を上げると、やっぱり微笑している課長がいて、私はまた顔を伏せた。
本当ならどんなにうれしいだろう。
それきり、部屋には沈黙が降りた。
ざあざあと降る雨の音が部屋に満ちる。
課長は決定的なことを言っていない。だからまだ、からかわれているだけの可能性だってある。
だから舞い上がるな、自分。落ち着け。
自分にそう言い聞かせているのに。
課長は私の肩を抱き寄せ、耳に囁く。はちみつのように濃密に甘く。
「個人的に連絡先を聞いてもいいかな」
私は声が行方不明になったかのように無言で立ち尽くしていた。
「嫌なら断ってくれてかまわない」
課長の声に、私は小走りに走った。
机の引き出しを開けてスマホを取り出し、すぐさま課長のところに戻ると、スマホを差し出す。課長の顔は見れなかったが、戸惑う気配が伝わって来た。
「それは……教えてくれる、ということでいいのかな?」
私はこくこくとうなずく。
課長がプッと噴出した。
「ときどき、そういう面白い反応するよね」
面白いことをしているつもりはないのに。
ちらりと目を上げると、課長の満面の笑みが見えた。
連絡先を交換すると、課長は言った。
「必ず連絡するから」
胸がきゅんとした。
どうしてただそれだけの言葉が私をとろかしていくのだろう。
「私も……必ずお返事します」
私は自分のスマホを見つめる。
課長のフルネームが入った画面が、雷光よりも輝いて見えた。
いつしか雨は止んでいて、課長の甘い視線がたっぷりと私に降り注いでいた。
終