氷龍の贄姫
第三話:告白
 エセルバードはいつの間にかサライアスの猶子となっていた。これは、ラクシュリーナも知らなかった。
 彼が正式に騎士となったら、サライアスの猶子から養子へ変更するとのこと。どちらにしろ、エセルバードはサライアスと父子(おやこ)の関係になっていたのだ。
 その関係を結んでから三年。
 アイスエーグル国にはまた雪の降る季節がやってこようとしていた。
 空気が冷え込み、太陽の光を反射させた粒子がきらめく中、複数の氷龍が連なって空へと飛び立った。
 ラクシュリーナはその様子を部屋の窓から眺めていた。
 ――エセルバードと出会った日も、こんな日だった。
 なぜかしみじみと感じてしまう。
 外は雪が降っていて寒いのに、壁一枚隔てたこの室内は、春のようなあたたかさに包まれていた。
 冬の長いアイスエーグル国にとって、火龍の龍魔石は必要不可欠なものである。湯をあたためるのはもちろん、火種にもなる。こうやって部屋をあたたかくしてくれるのも、火龍の龍魔石の力のおかげだ。火の龍魔石のおかげで、火種は容易に手に入る。
 それでも今年は、龍魔石不足が起こるかもしれないとささやかれていた。
 というのも、各国の龍魔石は条例に基づいた物々交換のようなもの。アイスエーグル国の龍魔石の採取量が減少しているのだ。
 それに危機感を募らせているのは、もちろん国の重鎮たち。国内の各地にいる有識者を集め、氷龍の様子をみては対策を考える。だが、氷龍の様子は今までと特に変化はない。
 雪が降れば空を飛翔し、一日に数回、鱗を龍魔石へと変える。だけど、最近、その量が少ない。
 そういった話は、離塔で暮らしているラクシュリーナの耳にも届く。
 そして、もう一つ。寝耳に水のような話が飛び込んできた。
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