氷龍の贄姫
第四話:成長
オーレリアはラクシュリーナと話をしてだいぶ落ち着いたようだった。別れ際には「一緒に夕食でも」と誘ってきたが、ラクシュリーナはそれを丁重に断った。オーレリアや兄たちと顔を合わせるのは問題ないが、父親とは会いたくない。それはきっと相手も同じ気持ちだろう。
遅くなると離塔への移動が大変だからと、無難な理由をつけて、誘いを断った。
この季節は日が落ちるのが早い。外は、あっという間に薄暮に包まれていた。ランタンを手にしたサライアスが先頭を歩き、その後ろをラクシュリーナ、エセルバードと続く。サライアスが手にしているランタンも、火の龍魔石によるものだ。火の龍魔石は明かりの源にもなる。
「凍り始めておりますね。滑らないように気をつけてください」
昼間に一度溶けた雪は、日が落ちるとまた凍る。そうなったときに雪の上を歩くのは滑りやすく転びやすい。いつもであれば、子どもじゃないのと文句を言うラクシュリーナだが、今だけは素直にサライアスの言葉に従う。
こういった雪道の歩き方にはコツがいる。サライアスもエセルバードも難なく歩いているが、慣れないラクシュリーナはよたよたと歩いていた。
「あっ」
一歩踏み出した右足が、前にツルリと滑った。そのまま後ろに尻餅をつきそうになったところを、エセルバードがすかさず手を伸ばして支える。
「姫様。お怪我はありませんか?」
薄暗くても、目の前にエセルバードの顔があるのがわかる。心配そうにのぞき込みながら声をかけてきた瞬間に、白い息が顔に触れた。
「姫様、ご無事ですか?」
サライアスもくるりと振り返る。
遅くなると離塔への移動が大変だからと、無難な理由をつけて、誘いを断った。
この季節は日が落ちるのが早い。外は、あっという間に薄暮に包まれていた。ランタンを手にしたサライアスが先頭を歩き、その後ろをラクシュリーナ、エセルバードと続く。サライアスが手にしているランタンも、火の龍魔石によるものだ。火の龍魔石は明かりの源にもなる。
「凍り始めておりますね。滑らないように気をつけてください」
昼間に一度溶けた雪は、日が落ちるとまた凍る。そうなったときに雪の上を歩くのは滑りやすく転びやすい。いつもであれば、子どもじゃないのと文句を言うラクシュリーナだが、今だけは素直にサライアスの言葉に従う。
こういった雪道の歩き方にはコツがいる。サライアスもエセルバードも難なく歩いているが、慣れないラクシュリーナはよたよたと歩いていた。
「あっ」
一歩踏み出した右足が、前にツルリと滑った。そのまま後ろに尻餅をつきそうになったところを、エセルバードがすかさず手を伸ばして支える。
「姫様。お怪我はありませんか?」
薄暗くても、目の前にエセルバードの顔があるのがわかる。心配そうにのぞき込みながら声をかけてきた瞬間に、白い息が顔に触れた。
「姫様、ご無事ですか?」
サライアスもくるりと振り返る。