氷龍の贄姫
サライアスは何もしゃべらなかった。もともと口数の多い人間ではなく、寡黙な男である。エセルバードも子どもらしくない子どもであるため、なんだかんだで似たような父子となってしまったのだ。
「……姫様は、大丈夫ですよね?」
ぐるぐるといろんなことを考えていると、どうしても最悪の事態を想像してしまう。
ラクシュリーナがいなくなったらと考えたら、胸が痛んだ。彼女のために騎士になると決意し、彼女を守ると心に決めた。それが、あの日からエセルバードにとっての生きる意味となったのだ。
「あぁ、大丈夫だ。姫様だからな。姫様が目を覚ましたら、薬を飲ませなければならないが。姫様のことだから、嫌がりそうだな……」
サライアスの言葉にエセルバードも同意した。
山の稜線が橙色に染まる頃、エセルバードは目が覚めた。隣の寝台はすでに空だった。
そろりと寝台より下りて、ラクシュリーナの部屋へと足を向ける。
「義父上……」
先にサライアスが様子を見に来ていたようだ。難しい表情で、ラクシュリーナを見下ろしている。
「あぁ、エセルか」
エセルバードの姿に気づいたサライアスは、目尻を下げた。
「姫様の熱は下がったようだ。念のため、医者を呼ぶつもりだ。朝食を終えたら、本城へ行ってもらえるか?」
「はい」
こうやってサライアスが信用して命じてくれるのも、エセルバードにとっては誇らしいものであった。
「……姫様は、大丈夫ですよね?」
ぐるぐるといろんなことを考えていると、どうしても最悪の事態を想像してしまう。
ラクシュリーナがいなくなったらと考えたら、胸が痛んだ。彼女のために騎士になると決意し、彼女を守ると心に決めた。それが、あの日からエセルバードにとっての生きる意味となったのだ。
「あぁ、大丈夫だ。姫様だからな。姫様が目を覚ましたら、薬を飲ませなければならないが。姫様のことだから、嫌がりそうだな……」
サライアスの言葉にエセルバードも同意した。
山の稜線が橙色に染まる頃、エセルバードは目が覚めた。隣の寝台はすでに空だった。
そろりと寝台より下りて、ラクシュリーナの部屋へと足を向ける。
「義父上……」
先にサライアスが様子を見に来ていたようだ。難しい表情で、ラクシュリーナを見下ろしている。
「あぁ、エセルか」
エセルバードの姿に気づいたサライアスは、目尻を下げた。
「姫様の熱は下がったようだ。念のため、医者を呼ぶつもりだ。朝食を終えたら、本城へ行ってもらえるか?」
「はい」
こうやってサライアスが信用して命じてくれるのも、エセルバードにとっては誇らしいものであった。