氷龍の贄姫
「やっぱり、エセルなのね」
「はい……信じられないかもしれませんが……」
「えぇ。まだ実感がわかない。あれから二十年ということは、わたくしも三十九歳? よかったわ、まだおばあちゃんにはなっていない……」
「違いますよ」
違うわけがない。ラクシュリーナが眠りについたのは十九歳の年だった。それから二十年が経てば、三十九歳になる。そのくらいの計算は、ラクシュリーナだって簡単にわかる。
「ラクシュリーナ様は十九歳のお姿のままです。氷で閉ざされた王城の中では、時間が止まっていたようですね」
彼はまた、信じられないようなことをさらっと口にする。
「その辺はおいおいと説明いたしましょう」
それよりも、と彼は言葉を続ける。
「ラクシュリーナ様には、アイスエーグル国の女王となっていただきたいのです。正当なる王族の地を引くあなたであれば、誰よりもそれに相応しい」
「女王……?」
ラクシュリーナは紫紺の瞳を大きく見開いて、首を傾げた。
「お兄様がいらっしゃるでしょう? 王は、お兄様ではなくて?」
二十年経っているとしたら、父親は六十歳になっただろうか。それでも兄たちは四十代だろう。
「あれから二十年の間に何が起こったのか、説明せねばなりませんね」
キュゥキュゥキュゥ――。
一体の氷龍が飛び立った。残りの氷龍もそれに続こうとしている。
「はい……信じられないかもしれませんが……」
「えぇ。まだ実感がわかない。あれから二十年ということは、わたくしも三十九歳? よかったわ、まだおばあちゃんにはなっていない……」
「違いますよ」
違うわけがない。ラクシュリーナが眠りについたのは十九歳の年だった。それから二十年が経てば、三十九歳になる。そのくらいの計算は、ラクシュリーナだって簡単にわかる。
「ラクシュリーナ様は十九歳のお姿のままです。氷で閉ざされた王城の中では、時間が止まっていたようですね」
彼はまた、信じられないようなことをさらっと口にする。
「その辺はおいおいと説明いたしましょう」
それよりも、と彼は言葉を続ける。
「ラクシュリーナ様には、アイスエーグル国の女王となっていただきたいのです。正当なる王族の地を引くあなたであれば、誰よりもそれに相応しい」
「女王……?」
ラクシュリーナは紫紺の瞳を大きく見開いて、首を傾げた。
「お兄様がいらっしゃるでしょう? 王は、お兄様ではなくて?」
二十年経っているとしたら、父親は六十歳になっただろうか。それでも兄たちは四十代だろう。
「あれから二十年の間に何が起こったのか、説明せねばなりませんね」
キュゥキュゥキュゥ――。
一体の氷龍が飛び立った。残りの氷龍もそれに続こうとしている。