氷龍の贄姫
第二話:交渉
ラクシュリーナの部屋は『工』の王城とは離れた位置にあった。だから子どもたちが雪遊びをしていたことに気づいたのだ。
エセルバードはいつもと違う建物へと足を向けていることに、不安を感じているようだった。
「わたくしのお部屋はこちらにあるの。わたくしのための、特別な建物なのよ」
そこは、離塔とも呼ばれている。
「寂しくは、ないのですか?」
エセルバードの問いに、ラクシュリーナは首を傾げた。
「寂しい? どうして?」
「だって、あちらにはたくさんの人がいますが、こちらには……」
「こちらには、カーラとサライアスがいるもの。他にも人がいるから、後で紹介してもらってね。あ、今日からはエセルバードも一緒ね」
「姫様……エセルバードは私と同室にさせますので、基本的には王城の住居棟が住まいとなります。私も姫様の護衛がないときは、あちらにいるでしょう?」
サライアスの答えが不満だったのか、ラクシュリーナはぷっと頬を膨らませた。
「サライアスがこちらにいるときはエセルバードもこちらにいるのでしょう?」
「姫様。エセルバードは私が弟子にすると言いました。鍛錬をつみ、身体を鍛えてもらう予定です。それから、勉強もしてもらわなければなりませんね。まだ、学校に通う年齢ではないので、自主的に学んでもらおうと思っています」
「だったら、決まりね! わたくしがエセルバードに勉強を教えればいいのだわ」
「姫様、その話はおいおいと考えましょう。さて、私は浴室の準備をして参ります」
離塔に足を踏み入れたとたん、カーラは浴室へと向かった。この離塔は、十年前の流行病のときに、ラクシュリーナの母親が使用していた建物である。病に冒された者を隔離するための場所なのだ。
エセルバードはいつもと違う建物へと足を向けていることに、不安を感じているようだった。
「わたくしのお部屋はこちらにあるの。わたくしのための、特別な建物なのよ」
そこは、離塔とも呼ばれている。
「寂しくは、ないのですか?」
エセルバードの問いに、ラクシュリーナは首を傾げた。
「寂しい? どうして?」
「だって、あちらにはたくさんの人がいますが、こちらには……」
「こちらには、カーラとサライアスがいるもの。他にも人がいるから、後で紹介してもらってね。あ、今日からはエセルバードも一緒ね」
「姫様……エセルバードは私と同室にさせますので、基本的には王城の住居棟が住まいとなります。私も姫様の護衛がないときは、あちらにいるでしょう?」
サライアスの答えが不満だったのか、ラクシュリーナはぷっと頬を膨らませた。
「サライアスがこちらにいるときはエセルバードもこちらにいるのでしょう?」
「姫様。エセルバードは私が弟子にすると言いました。鍛錬をつみ、身体を鍛えてもらう予定です。それから、勉強もしてもらわなければなりませんね。まだ、学校に通う年齢ではないので、自主的に学んでもらおうと思っています」
「だったら、決まりね! わたくしがエセルバードに勉強を教えればいいのだわ」
「姫様、その話はおいおいと考えましょう。さて、私は浴室の準備をして参ります」
離塔に足を踏み入れたとたん、カーラは浴室へと向かった。この離塔は、十年前の流行病のときに、ラクシュリーナの母親が使用していた建物である。病に冒された者を隔離するための場所なのだ。